直接法 Direct method

学び方

対象言語のみを用いて言語を教える方法です。文法事項の解説なども含めて、学習者の母語ではなく、授業のすべてを日本語でおこないます。

全く日本語を知らない人を対象に日本語だけで日本語を教えると言うこと。なんだかピンと来ないかもしれませんが、これが本当に効果的だと言うことは私自身経験的に知っています。

徹底的にこの直接法を日本語教師養成講座の受講生の間に叩き込み、毎日のデモンストレーションで即実践を繰り返すことで、身につけることができました。

その後も現在に至るまで直接法を基礎とした教授にあたっています。時間はかかりますが、確実に生徒にも身に付く教授法だと思います。

この方法で全く日本語が話せなかった人が、読み書きだけでなく、話せる様になるのをたくさん見て来ました。

言語を学ぶと言うことは意味だけ調べて理解するのでは身につきません、その使われているコンテキストを理解して初めてその言語の意味と使い方、使う場面を理解することができ、そしてその学んだことを実際に使用することが可能になるのです。

まさに、子どもが言葉を学んでいくプロセスと同じですね。

次にレッスンの流れを説明します。

導入 Lead-in

言語を習得するには、まず言葉を学ぶことからです。直接法で教える際にも、まずは単語を教えることから始まります。

レッスンとして使いやすく、また生徒の社会生活にあった単語の選定を慎重にする事が大切です。単語の選定に関しては、CLIL同様です。

一度に導入する新単語は10〜15までは理想と思います。では、日本語を全く知らない生徒を対象にした最初のレッスンで教える単語の例をあげます。ひらがな、清音、濁音、拗音、半濁音は紹介済みとします。

小学生えんぴつ、消しゴム、ノート、本、水、りんご、帽子、フォルダー、鞄、つくえ、椅子、ゴミ箱 など
大人ペン、携帯電話、かばん、りんご、ノート、本、駅、家、コンピューター、アイパッド、眼鏡、お金 など

以上の単語を実際の物(理想)もしくは、写真やイラストを使いながら導入して行きます。単語を覚えないと次のレッスンに進めませんので、必ず生徒に何度もリピートさせる必要があります。

基本的な流れは、

  • 先生が単語を言う
  • 生徒全員で数回りピート
  • 先生が単語を言う
  • 生徒全員で一度リピート
  • 生徒個人で単語を言う(この時、先生は発音をチェック)

そして次に、先生が導入した単語の物を持ち、もう片方で指で挿しながら、
『これは、本です。』この流れで、少し離れた物を挿しながら『それはカバンです。』と言って『これ、それ』の使い方の違いを見せた状況を設定して、意味と使い方の理解を促します。

そして、

  • 先生が物をさし『これ』と言う
  • 生徒が全員で数回リピート
  • 先生が再度『これ』
  • 生徒個人で単語を言わせ発音をチェック

以上の様に新しい単語や構文を教えた際には生徒個人の発音をチェックするまでがとても大切です。ここまでの流れを導入と言います。

導入が終わると次は代入練習です。

代入 Drill exercises

ここでは、既習した語彙と文型を使って口頭で練習します。例えば、生徒は15程の単語と『これは〜です。』と言う文型を既に学習しているとしましょう。

そして、その単語がプリントされた物を生徒はそれぞれ持っています。

  • 先生は単語の一つを指し、『これは〜です。』
  • 生徒も自分の紙にプリントされた同じものを指し『これは〜です』
  • 先生は別の単語を指し、単語だけを言う『えんぴつ』。先生は始まりの文『これは〜』だけを言うことで、生徒に全文を言うように即す。(Cue-response practice)
  • 生徒は絵を指し『これは〜です』
  • 先生は別の絵を指し、単語だけを言う『電話』。『これは〜』
  • 生徒は電話の絵を指し『これは電話です。』

以上のような流れで代入練習を進めます。全員での代入練習が終われば、単語導入の時の様に個人で文を言わせてチェックします。

ここまでくれば、次はこれらの習った単語と構文が実際の生活で使えるようになるための練習が必要になります。

練習 Oral practice

ここまでくればペアやグループになって練習が可能になります。ここでは今までの流れを踏んだペアでの練習方法を紹介します。

生徒1『これは〜ですか?』
生徒2『はい/いいえ』

以上の様なやり取りをする事を目的とします。しかし、文末についた『か?』や『はい、いいえ』の意味を理解していませんね。

と言うことはこの様な練習に行く前に導入が必要になります。導入の手順は割愛しますが、導入はえんぴつを持ちながら、『これは本です』と言うと、生徒は間違いなく全員首を横に振ります。

若しくは母国語で『No』を即答します。そして、先生は『いいえ』と良い生徒にリピートさせます。次にえんぴつを持ち『これはえんぴつです。』と言うとYesの導入が可能です。又、文末につく『か?』の導入は?マークを見せると簡単です。

そしたら、生徒は『〜か?』『はい/いいえ』の意味が理解出来ました。生徒が理解出来たかクラス全体で練習が必要ですね。

  • 先生が質問し、生徒が全員で『はい/いいえ』で答える練習
  • 生徒一人に質問を作らせて、残りの生徒が答える
  • 生徒をペアにして練習をさせる

本当に日本語を何も知らない生徒を対象にした初めのレッスンの流れはこんな感じです。気持ちいいぐらいに話せるようになります。

このレッスンの前に簡単に『私は〜』と言う自己紹介のレッスンをしてからの話ですけど。

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